アメリカについてキリスト教から知る事ができる森本あんりの著書おすすめ4冊

最近森本あんりの本を色々読んでいるのだが、どの本もキリスト教国家としてのアメリカを知ることができて興味深い。

なぜアメリカでトランプ大統領のような政治家が好まれるのか、民主主義を生んだアメリカの土壌、政教分離という概念がなぜ重要かなどといったことを「アメリカで土着化したキリスト教」という観点から紐解いてくれる。そこでここでは森本あんりの著書4冊をリコメンドしようと思う。どれもアメリカについての理解を深めてくれること間違いなしの一冊だし、歴史ものとしても面白いはずだ。

森本あんりは神学・宗教学の専門家で主にアメリカのキリスト教についての著書を出している。

1956年、神奈川県生まれ。国際基督教大学(ICU)人文科学科教授。国際基督教大学人文科学科卒。東京神学大学大学院を経て、プリンストン神学大学院博士課程修了。プリンストンやバークレーで客員教授を務める。専攻は神学・宗教学。
新潮社

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宗教国家アメリカのふしぎな論理

詳しいことはいいから一冊読んで済ませたいという人にオススメなのがこの『宗教国家アメリカのふしぎな論理』。「企業トップが学ぶリベラルアーツ」というシリーズの第二弾だそうで、若干シリーズ名が鼻につくが別に企業トップじゃなくてもアメリカを理解するのに役立つ本だと思う。

いろいろなところでした講演や書いた記事をもとにまとめられた本なので様々なトピックについて触れられているし、トランプ政権が誕生した背景はこうしたものがあるんですよという解説がある。コストパフォーマンスの良さでは一番かと。これ一冊読むだけで、アメリカについて普通の日本人は知らない観点からアメリカを見ることができる。

この本は「アメリカに土着化したキリスト教の特殊性」によって現代アメリカを解説している。一般に宗教はそれぞれの土地に根付いて発展する時にその土地に大きな影響を与えるとともに独自に変化していく。このプロセスを「土着化」とか「文脈化」などと呼ぶ。ちなみに日本においてキリスト教はどのように土着化したかを書いたのが、前に本ブログで記事を書いたマーク・R. マリンズ『メイド・イン・ジャパンのキリスト教』だった。

そしてアメリカに土着化したキリスト教の特徴は、「富と成功」という福音だという。元々キリスト教では神は一方的に恵みを与えてくれる「片務契約」を交わした存在という捉え方だったが、アメリカにおいてはこれが「双務契約」になる。どういうことかというと、人間の義務は神に従うことであり、神の義務は人間に恵みを与えることであるということ。つまり、「私は社会的に成功して金持ちになった=わたしは神の祝福を受けた=神の祝福を受けられたということは私は正しい人間だ」という三段論法が成立するのである。これは一代で成り上がった金持ちを「どうせ悪いことしたんでしょ」と見がちな日本とは真逆の価値観だ。

このところを読んで、確か町山智浩が「アメリカ人は国民皆保険制度を導入しようとしない。金持ちならまだしも制度があった方が得な貧乏なおっさんでも『いや俺がいつか金持ちになった時損だから』などと言って反対する」と言っていたのを思いだして腑に落ちた。

つまりアメリカ人は「神の前に恥じない生き方をしていれば現世で金持ちになれる」と思って生きているわけで、そのおっさんも「いや俺真面目に生きてるからいつか金持ちになれるはずだし」と思っているのだろう。

新書一冊でアメリカの伝統的に受け継がれている考え方と今アメリカでそれがどう現れているのかというのがわかるのでお買い得の本である。特に今(2021年3月)キンドルアンリミテッドに入っているので、会員の人は必読。

キンドルアンリミテッドバナー

反知性主義―アメリカが生んだ「熱病」の正体―

リバイバリズムは、ピューリタリズムの極端な知性主義への反動として生まれ、独立期には信教の自由を求める政治家と宗教家との連合を作り出した。そしてジャクソニアン・デモクラシーとアメリカの自然志向を背景に、ビジネス的な実利精神と融合してキリスト教を大衆化し、フィニーやムーディやサンデーといったヒーローたちを輩出した。反知性主義は、その後も現代に至るまでアメリカに固有の現象として定着し、知性の越権行為が疑われるところでは敏感にそれを察知して批判力を発揮する。
森本あんり『反知性主義―アメリカが生んだ「熱病」の正体―』P266

現在日本では反知性主義はバカの言い換え語としてよく使われているが、アメリカの反知性主義とは知性と権力が結びつくことへの反対運動でありラディカルな平等主義でもあるということを、アメリカの信仰復興運動(リバイバル)の歴史を追いつつ説明する本。

反知性主義はヨーロッパの伝統的な知性に対する独立心の現れでもあり、新世界でより実践的な知を建設していこうという考えでもあった。アメリカには元々ピューリタンの極端な知性主義の土壌があって、そうした頭でっかちな信仰ではない個人の信仰心を煽り立てる伝道師たちの活躍とビジネス的成功がアメリカのキリスト教社会に影響を与えていったという。元野球選手で大衆伝道師に転向したビリー・サンデーのエピソードは面白い。

ただ、この本では反知性主義をアメリカ特有の現象だとしているがそれは本当にそうなのかという疑問もある。

あとがきでもちょっと出てくるが、法然や親鸞のような鎌倉時代の仏教改革者は反知性主義的なところがあるし、フランスで実施されているという議員の一部を抽選で選ぶという「くじ引き民主主義」は反エリート主義という意味では反知性主義だし、特別な血筋じゃなくても特別な教育を受けてなくても民衆は政治について正しい判断を下せるという民主主義の基本にある反知性主義に沿ったものに見える。

あと、この本のあとがきでは政府の働きを最小限にするリバタリアニズムがアメリカの若者で広がっていると書かれているのだが、これは社会保障の充実を目指すバーニー・サンダースが若者の間で人気という話と食い違う。この本の発行が2015年だから2016年の大統領選挙とそれほど時間の隔たりはないはず。答えとしてはこの本が間違っているのか、日本のマスコミがサンダースの人気を盛っているのか、若者の考え方が二極化しているのか……。

本書の元ネタになったというリチャード・ホフスタッター『アメリカの反知性主義』も名著らしいので読まなきゃなぁと思っているがまぁおいおいね……。

不寛容論―アメリカが生んだ「共存」の哲学―

この本については単独で記事を書いたのでそっちを読んでほしいが、政教分離や内心の自由はどんなところから生まれてきたのか、そしてそれらの概念が生まれた植民地時代のアメリカについて知ることができて非常に面白い。

民主主義はフランス革命から生まれたというフランス革命史観の人は結構いるが、いやそれより先行してアメリカは独立していたし、独立前のアメリカ植民地時代で時間をかけて重要な概念が熟成されてきたんだということが本書を読めばわかる。

現代に語りかけるキリスト教

アメリカとは関係ないが、日本人にはあまり馴染みがないキリスト教やキリスト教の考え方の入門書として良いのでオススメ。

私はミッション系の学校に通ったのでキリスト教や聖書についての授業を多少受けてきたが、主に宗教的道徳の話だったので、キリスト教における自然観や社会観を読むのは新鮮で面白かった。

キリスト教は社会や文化が形成期にある地域で盛んになる「形成の宗教」であり、新しい時代が拓かれ。人々の意欲が興る時、それに活力を与え、目的を与えるのがキリスト教だというのは興味深い。

キリスト教概論の授業テキストにするために書かれた教科書なので、何も事前知識が無くても読めるし短い。

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