横山三国志の初期張飛のヒゲは資料がなかったからではない

 キンドルで吉川英治三国志の合本が非常に安かったので読んでいる。文庫だと全巻6500円以上するところをKindleだと500円以下で買えるぞ!

 さて皆さんもご承知のとおり横山光輝版の三国志において、張飛が最初に登場するシーンでは彼のヒゲがない。

 横山先生が三国志の漫画を描き始めた時はまだ中国と国交が回復してないような時期で資料を集めるのも大変だったそうだ。登場初期の張飛にヒゲが無いのもこうした事情によるものだという説が普及している。自分もそういうものだとずっと思い込んでいた。

 しかし横山先生が三国志を描くにあたって原作にした吉川英治の三国志を読んでみるとそうではないことがわかった。

黄巾賊を討伐する兵士を募る高札の前で劉備が張飛に再開するシーンだが、張飛の外見描写はこうなっている。

 黒漆こくしつひげの中で牡丹ぼたんのような口を開いて笑った。
 声も年頃も、劉備と幾つも違うまいと思われたが、偉丈夫は、髪からあごまで、隙間もないように艶艶しい髭をたくわえていた。吉川英治『三国志』

 そして張飛のことがわからない劉備に対してこう言うのである。

無理もない。頬の刀傷で、容貌も少し変った。それにここ三、四年はつぶさに浪人の辛酸をなめたからなあ。貴公とお目にかかった頃には、まだこの黒髯もたくわえてなかった時じゃ吉川英治『三国志』

 つまり最初にあった時はヒゲを生やしていなかったのも、張飛のヒゲが虎ひげでなくふさふさとした黒いヒゲなのも、頬に×マークの傷があるのも吉川英治に準拠した描写だからなのだ。別に資料が乏しかったからではない。

 今まで自分は勘違いしていたのだが吉川英治の三国志を読むことで間違いに気付くことができた。やっぱり本は下敷きになったものまで含めて読むものだなぁというお話です。

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