前回『女子高生探偵シャーロット・ホームズの冒険』を読んだので今回はその続き。『女子高生探偵シャーロット・ホームズの帰還』と『女子高生探偵シャーロット・ホームズ 最後の挨拶』を読む。
『女子高生探偵シャーロット・ホームズの帰還』
冬休みになりシャーロット・ホームズの実家を訪れたジェイミー・ワトスン。彼はそこでシャーロットの母親の毒殺未遂事件と、シャーロットの叔父で探偵のレアンダーの失踪事件に巻き込まれる。レアンダーが調べていた絵画の贋作事件に手がかりがあるとベルリンに向かった二人だったが、そこでモリアーティ家の末っ子でシャーロットの初恋の相手だったオーガスト・モリアーティと出会う。
前作で謎解き部分がグダグダと書いたが、今作ではそのグダグダがさらに加速している。話が進んでいくようで読者にはバラバラの情報しか与えられず、事件は進展しているのかしていないのかわからない。最後には一応のカタルシスシーンと、完結編へのひっぱりになるどんでん返しが与えられるのだが、読んでいて目が滑るというか、情報の出し方がとにかくまずいと思う。まずキャラクターが努力はするが何もつかめないジェイミー・ワトソンと、それ以外の何もかもお見通しだが読者には一切の情報を与えてくれないホームズ一族とモリアーティ一族の2種類しかないので、読者はただ混乱するしかないのだ。物語にリアリティを与えるディティールもあんまり上手くできてるとは言えなくて……。美術学校の教授が学生に課題として描かせてる贋作なんてプロの目から観たらすぐわかるんじゃないの?
まぁそのあたりの追跡と謎解きを舞台立てと割り切って読むと残りにあるのは、ジェイミーとシャーロットとオーガストの三角関係だ。能力的に劣っているジェイミーがオーガストに抱くコンプレックスとシャーロットのジェイミーへの微妙な感情はまぁ描けている。しかしこのシャーロットの初恋の相手のオーガストがあまりいいキャラクターではない。犯罪者一族のモリアーティ家において例外的ないい人なのだが、それが理解を絶するようないい人すぎてリアリティがない。読者に「こいつは本当にいい人なのか?」と疑わせる意図もあるんだろうけど、結局最後までオーガストに対する印象を保留したまま読み終わってしまった。最終巻はもうちょっと盛り上がってくれるといいんだけど……。