【Kindle Unlimitedおすすめ小説】『小説版ドラえもんのび太と鉄人兵団』

Kindle Unlimitedにのび太と鉄人兵団のノベライズが来てるのを発見して、実本でも読んだけどFireタブで再読してしまった。

『小説版ドラえもんのび太と鉄人兵団』は原作劇場版アニメが新ドラ体制でリメイクされる際に小説化されたもの。といっても、内容的にはリメイクされた『新鉄人兵団』を小説化したわけではなく、旧劇場版・原作漫画がもとになっている。

小説化したのはあの瀬名秀明。『パラサイト・イヴ』で有名なSF作家である。

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大人向けドラえもん小説

基本的なストーリーは原作と変わらないが、鉄人兵団の脅威、各キャラクターの内面描写がよく書き込まれていてる。特に鉄人兵団との戦いの描写は迫真。鉄人兵団はドラ映画の敵の中でも特に戦力が高く強敵の部類に入るが、戦争モノのように描写される鉄人兵団との戦いは原作視聴者も息を呑むだろう。

『大魔境』など鉄人兵団以外の劇場版アニメやのび太という名前の由来など原作エピソードのネタもあちこちで出てくるので、ドラえもんへのリスペクトが感じられるし、ファンはより楽しめる。

書いているのが本職のSF作家だけあって原作より突っ込んだSFネタが出てくるのも良い。

「あれ、待てよ、鏡面世界の食べ物って本当に食べられるのかな……?」
 ふと不安になったのび太に、ドラえもんが答える。
「鋭い! よくそこに気づいた。世の中には鏡に移して左右あべこべのかたちにすると、味がなくなったり、クスリが毒になったりする物質がたくさんあるんだ。でも大丈夫、二二世紀の科学はちゃんとそのへんもクリアしている。<フエルミラー>で増やしたどら焼きを食べたこと、あるだろ。この鏡面世界も、植物は枝つきが左右あべこべになるけれど、やっぱり草木として生きている。構成分子の鏡像異性体化がうまーく制御されて、毒ができないようになっているのさ。だから肉も野菜も安心して食べられるんだ!」
「へえーっ。でも、そのキョーゾーなんとかだけを、どうやって?」
「うん。いい質問だけど、その説明は長くなるからやめておこう」瀬名秀明『小説版ドラえもんのび太と鉄人兵団』

引用した描写はのび太たちが鏡面世界の深夜のスーパーに入って好きなものを取ってきてバーベキューの準備をする場面に挿入されたひみつ道具の説明だが、未来世界の技術の詳しいSF解説に、『雲の王国』でのび太が雲を固めたら雨になって落ちてしまうんじゃないかという疑問をドラえもんに聞いた時のネタが重なっていてニヤリとできる描写だ。子供が読んでも楽しめるだろうが、子供の頃ドラえもんを見ていた大人はより楽しめるのではないだろうか。

特にスネ夫ファンにはよりオススメ

内面描写がよく書き込まれているというのは前述したが、そのおかげで各キャラクターの深みがより増している。その恩恵を一番受けていると感じたキャラクターはスネ夫だ。

俗に”劇場版補正”と言われるものがある。普段はだらしなかったり怠け者だったりするのび太が優しくて勇敢な少年になって射撃の特技を活かして活躍したり、暴君レベルの乱暴者なジャイアンが漢気を発揮して仲間を助けたり敵に立ち向かったりする現象のことだ。

これがスネ夫に関してはむしろマイナスに働くことが多い1)スネ夫は普段から嫌味なヤツなので、マイナスからマイナスになってるだけで目立たないのだろう。劇場版ドラえもんのスネ夫はだいたい弱音を吐いて「ママ~!!」と泣くポジションだ。スネ夫が弱い面・常識的な面を見せるからこそのび太やジャイアンの勇気が引き立つので、スネ夫はスネ夫で必要のある仕事をしてくれているのだが、あまり良いところのないキャラクターであることにはかわりない。

しかし『小説版鉄人兵団』ではそんなスネ夫の心理描写がきっちり書かれるので、むしろ読者が感情移入できるキャラクターになっている。さらにスネ夫がミクロスの整備をするシーンや、最終盤の鉄人兵団との決戦シーンではザンタクロスに乗って戦うなど原作にはない見せ場が追加されているので、漫画原作や劇場版アニメよりスネ夫の活躍が印象に残る。スネ夫ファンは必読の一冊といえるだろう。

『小説版ドラえもんのび太と鉄人兵団』はKindle Unlimitedの無料読み放題対象に入っている(2020年3月現在)。

『新鉄人兵団』は評価が別れているらしいが個人的には大好き。アマゾンプライムビデオの見放題作品なので未見の人はついででいいので見てほしい。

脚注   [ + ]

1.スネ夫は普段から嫌味なヤツなので、マイナスからマイナスになってるだけで目立たないのだろう
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