【読書】渡辺仙州『三国志博奕伝』マイナーな人物を取り上げた異色の三国志モノ

 前にも書いたように吉川英治の三国志をちまちまスキマ時間で読んでいるのだがたまたま図書館でこの本を見つけたのでタイトルに釣られて手に取った。

三国志博奕伝表紙

作品のネタバレがあります。
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ギャンブルモノとしてはあんまり面白くないのだが

 三国志の時代の呉に住む韋昭という歴史家が甦った呂布や董卓と博奕で対決するという小説だ。ジャンルとしてはカイジみたいなギャンブルバトルモノで、この手の作品はキャラクターが如何に相手の思考の裏をかくか、ルールの隙を付くかというのが肝になるのだが……。残念ながらこの小説はそこをあんまり面白く書いてくれない。

 というのも最初の呂布&陳宮コンビとのすごろく対決では後出しジャンケン的に伏せたカードで勝敗が決まるし、董卓&李儒コンビとのジャンケン対決での読み合いも幼稚というか単純。最後の黒幕である于吉との勝負では韋昭が読み合いもルールもクソもなくその運命力で勝ってしまう。これ面白いか?

マニアックすぎる元ネタからの引用

 でも作者の三国志へのマニアックな偏愛はわかるような気がする。三国志の時代と言ってももう曹操も孔明も死んでる誰も興味ないような時代が舞台というひねくれっぷり。主人公の韋昭と相棒の蔡頴はオリジナルキャラかと思っていたが調べてみたら実在の人物らしい。一応日本語版ウィキペディアに記事があるけど三国志好きでも早々覚えているような人じゃないと思うよこの人。

韋 昭(い しょう、? – 273年)は、中国三国時代の呉の政治家・儒学者・歴史家。字は弘嗣。揚州丹陽郡雲陽県(江蘇省丹陽市)の人。子は韋隆。

(中略)

丞相府の役人をはじめに、西安県令・尚書郎を務め、太子中庶子に昇進して当時の皇太子である孫和に仕えた。この頃に孫和の命を受けて、『博奕論』を著して博奕(六博や囲碁)を批判している。

(中略)

なお小説『三国志演義』には登場しない。

ウィキペディア 韋昭

 『博奕論』を書いたからこのようなギャンブル小説に登場した、というより『博奕論』を書いた韋昭を主人公にするためにこの作品がかかれたのだろうが、演義に登場しない文官を主人公にってものすごい思いきりだ。だいたい三国志博奕伝ってタイトルで甦った武将が博奕で戦うって聞いたらもうちょっと派手派手しく時代や背景を無視して様々な武将が登場すると思うだろう。それが割と史実に基づいた地域と人物を持ってきて話を展開していくのだから面食らってしまった。

韋昭は三国志博奕伝では博奕を批判するが実は強大な博奕の才能があるキャラクターとして描かれている。一般的に面白い小説を求めている人はともかく、三国志好きでマニアックなキャラの書かれた創作なら網羅せずにはいられない!って人にはオススメしておく。

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