【ネタバレ感想】ランボー弱者が『ランボー ラスト・ブラッド』を観てみた記事―ランボーが生きているのは地獄だった

前回まででようやっと過去四作を観れたので、劇場へ行って『ランボー ラスト・ブラッド』を観てきた。流石にこの状況だけあって席を一つ開ける座り方を考慮しても客の数は少なかった。

以下ネタバレあり
スポンサーリンク
スポンサーリンク

ネタバレ感想:何も終わっちゃいなかった

いきなり何が驚いたかって冒頭の暴風雨の中人命救助をするシーンですね。あのランボーが人を助けてお礼を言われている!あの虐げられ舐められ雑に扱われてきた男がですよ?

そして予告編とか何も事前に情報を入れていなかったので二度目に驚いたのはあのランボーが家族を持っているということ。前作で最後故郷に帰ったのはわかっていたが、新作を作るからには再び故郷を離れてどこかへ行っているものだとばかり思っていた。それがまさか前作からずっと(十年)故郷の牧場で生活していたとはと意表を突かれてしまった。

血はつながっていないが友人マリアと友人の孫娘ガブリエラと一緒に暮らし、娘が成長するのを共にしたというのは実際家族と言っていい。実際作中でもそのようなことは言われている。

だが故郷で暮らし家族ができたからと言ってランボーが癒やされたというわけではない。精神安定剤をしょっちゅう飲んでるし、家の地下に広大で入り組んだトンネルを掘っている。そのトンネルはかつてベトナムで戦っていた時潜っていたトンネルの再現でもあり、箱庭療法的に自分の精神を安定させるためのものでもあるのだろう。トンネルの中で過去の悪夢がフラッシュバックするシーンは前作『最後の戦場』の描写を思い出すところだ。まさに”何も終わっちゃいねえ!”のである。

このあたりの「それ人殺せる奴でしょ?」なレターナイフをガブリエラに送ったりする不器用な関係や馬の調教シーンはランボーに残された人間性をよく描けていて『ランボー3』のように退屈することはないのだが、ランボーという映画が年老いた傷ついた老人のセラピーに終わるはずがない。案の定娘は失踪した自分の父親を追ってメキシコに行き、マフィアに拉致されてしまう。

ランボー怒りのホーム・アローン

バイオレンスの果てになんとかガブリエラを助け出すも、顔を切り裂かれクスリを大量投与させられた娘はメキシコから脱出する車内で息を引き取ってしまう。今まで何度も敵地から人を救い出してきたランボーがここに至って最も助け出したいであろう女の子を失うショッキングなシーンだ。「車内で悪夢を見たと思って忘れればいい」と、未だに悪夢にうなされているランボーが言うのが本当に悲痛でやりきれなくなる。

そしてガブリエラを埋葬してマリアが他所の土地へ移っていった後のランボーが行うのは当然復讐である。メキシコマフィアを誘い込んで殺すために庭を堀で囲み、例のトンネル中に罠を張り巡らせる。ゲリラ戦で戦っていたランボーらしいやり方で、ランボーシリーズは戦争アクションが売りだったが今回の見せ場はホームアローン、つまりホームスタローンである(誰もが思ってるが口には出さないことを決死の覚悟で言う)。

その復讐準備をしているランボーの顔、そして目がすごい。本当に人間が怒りに達した時すべての感情は表に出なくなるということを体現しているような顔で、かつてトラウトマン大佐がそうあれと望んだような純粋な殺人マシーンに成り果てている。

マフィアの大ボスの弟の首を獲って宣戦布告するランボー。おびき出されてランボーの家に大挙してやってくるマフィアたち。そして迷路になっているトンネルに入り込んだマフィアをランボーは一人ずつぶっ殺していくのだが、その次から次へと出てくるトラップの勢いとトラップにハマった敵に無言でトドメを刺していく姿はアクション映画というよりスラッシャームービーのように見えるほどだ。まぁスラッシャームービーと違って殺されるのは悪事の限りを尽くしたマフィアなんだけど。

飛び散る人体は前作『最後の戦場』ほどではないが、それは単にランボーが大火力の機関銃を持っていないというだけでバイオレンスレベルとしては同等以上だ。

『ランボー ラスト・ブラッド』は終わったが、ランボーの地獄変は続くのか?

そして殺戮を遂げた後、軒下のロッキングチェアに座るロッキーの表情を観て気付かされる。ランボーが生きているのは地獄だったのだ。今でもこれからも。

最初のタイトル、『ファーストブラッド』と対をなす『ラストブラッド』という題からしてこれで終わらせるつもりだと思うが、帰るべき場所も守るべき家族も何もかも失ったランボーの新シリーズを観たい気もする。スタローンの年齢的にシリーズは無理かもしれないが、この栄光から隔たれたヒーローの地獄変にはまだ先がある気がするのだ。

地獄を生き、理不尽に耐え続け、もはや怒りすら残っていないかもしれないランボーがまた立ち上がる時が来るとすればそれは救いなのかそれとも死なのか。それが描かれる時何かさらに壮絶なものが出てくるのではないか。

ランボーシリーズを短期間で履修した自分でさえ今作の映画のラストにはランボーというキャラクターの人生の重量を感じた。多分シリーズをリアルタイムで追っている人間にとってはなおさらだろう。前編101分でエンディングの時間を抜けば90分ほどか? 筋肉アクション俳優が老骨に鞭打ってなどと小馬鹿にして観たら腰を抜かすこと請け合いの一時間半だった。シリーズファンならマスト、自分のようなランボー弱者でも行って損はなかった、そんな重みのある映画だった。オススメです。

スポンサーリンク
スポンサーリンク