バンクスがあまりにも狂暴に見えたので、ランボーにはあることが理解できた――この男にとっても悪夢がぜったいに終わらないことを。
あるいはほかの男たちにとっても。
デイヴィッド・マレル『ランボー 怒りの脱出』P318
前回は映画『ランボー』の原作、『一人だけの軍隊』を読んだが、今回は映画『ランボー2』の原作……ではなく、映画の脚本をもとに原作者デイヴィッド・マレルがノベライズした小説『ランボー2』を読んでみた。図にするとこうなる。
映画五作観て、小説二本読んだので自分もいい加減そこそこのランボー強者になれたのではないだろうか。「映画化」ではないので映画化タグをつけるのはおかしいのだが、まぁ映画と小説の比較ということで映画化タグをつけておく。
服役中のランボーのもとを、グリーン・ベレー時代の上官トラウトマンがCIAの男と共に訪れた。そして釈放を条件に特殊任務を要請する。今なおヴェトナムにいるとおぼしき米軍捕虜救出のため、まず彼らの写真を撮影せよというのだ。承諾したランボーは敵地の只中にパラシュート降下を決行する。が、その際の事故で装備の大半を紛失。しかも行手に待つのは予想外の残虐な罠だった! 弓矢、ナイフ、機関銃、武装ヘリなどを駆使して密林に展開される地獄の激闘! 『一人だけの軍隊』(映画化名『ランボー』)に続く衝撃のスーパー・アクション巨篇
デイヴィッド・マレル『ランボー 怒りの脱出』
映画の脚本、ちなみに書いたのは『タイタニック』『アバター』のジェームズ・キャメロン、に基づいたノベライズということで、あらすじはほぼ完全に映画と同じ。
前回書いたように映画『ランボー』と小説『一人だけの軍隊』は結構違うのだが、今作はあくまで映画『ランボー』の続編映画のノベライズということで、『一人だけの軍隊』とはつながらない。いや『一人だけの軍隊』は最後ランボーが死んでいるのでつながらないのは当たり前だが。劇中でかつて山中に追い込まれた時サバイバルナイフの柄に仕込まれた針と糸で傷を縫ったとあるが、『一人だけの軍隊』ではそもそもサバイバルナイフを持っていなかったりとハッキリ「これは映画の続編です」という描写がある。
ランボーの描写もスタローン演じる寡黙な戦士にかなり寄せていってる感じだ。
読んでいてここはちょっと違うなと思うことはあるが、脚本にはもともとあったけど編集で削られたのか、それともデイヴィッド・マレルが変えたのかはちょっとよくわからない。ただ『一人だけの軍隊』の描写に比べるとより内面描写が少なくさらっとしている印象はある。これはもとが映画ということが影響しているのではないだろうか。
全体を通してランボーが”禅”の境地で辛さに耐えるという描写があって、「オリエンタリズムゥ~」と思ってしまうが、それがスタローンの耐えるランボーのイメージにあっているというのも確か。
また時間がかなり限られている映画と違って字数に余裕があるということで、主にヒロイン周りの描写が増えている印象がある。
映画では父の仕事を受け継いで情報活動をしているコー・バオだが、小説では弟と12歳の息子をアメリカに送ることを条件に情報活動をしている。夫は戦死した。この設定があるだけで映画よりグッと人物描写が厚くなっている。ランボーと脱出する時に「結婚してアメリカにいる弟と息子の元に連れ帰ってほしい」と頼むシーンとか、すでにアメリカに渡っている家族の存在があるとより切実なものに感じられると思うのだがどうか。
映画後半の怒りの大暴れシーンだが、映画でもきっちり一人で百人以上の敵兵を撃ち倒す。この書き方がちょっと面白くて、基地にいるトラウトマン達が無線を傍受して、ソ連の兵が次々に殺されていくことを間接的に知り、ランボーがやっているんだ!と確信するという書かれ方をしている。小説オリジナルなのか、それとも映画でもこういう見せ場をやろうとしていたのかちょっと気になるところだ、個人的には映画だとアクションのテンションを切るようになってしまうから小説オリジナルなのではないかと思うが。
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映画『ランボー 怒りの脱出』とこのノベライズ、そして第一作の小説とこのノベライズを比べてみると面白いだろう。