映画『キングダム』【感想】映画化難しい原作漫画だろうによく上手くやったなと感動

ヤングジャンプで連載されている漫画『キングダム』が実写映画化されると聞いたときは難しいんじゃないかと思った。だって原作は中国の戦国時代を描いた漫画で、大勢の兵士同士がぶつかる戦争モノ、将軍が剣や矛を振るえば兵士が束になって吹き飛ばされる無双シーン的な戦闘のある作品だ。現代日本からすればかなりフィクショナルな舞台で、大勢の人間が大暴れする話だから大規模な予算かつ大規模なセットを組んでやらなけりゃ話にならない。

そう思っていたのだが公開後の評判を見ると結構高評価をする人が多く気になっていたので観に行ってきた。ちなみに自分は原作漫画を雑誌で読むが単行本は集めてなく漫画喫茶で読むレベルであり、あまり熱心なファンとは言えない。映画を観るにあたって事前に漫画喫茶で全巻読み直して行ったのだが……これが予想以上に良かった。

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あらすじ

キングダムチラシ

舞台は紀元前3世紀の中国大陸。戦乱が500年以上続く春秋戦国時代。西方の大国「秦」に奴隷として働く信と漂という戦災孤児がいた。この時代一度奴隷となった者は生涯奴隷として生きなければならない。しかし奴隷の身分からでものし上がれる方法がたったひとつある。それは戦争で手柄をあげ出世すること。信と漂は「いつか必ず天下の大将軍になる」という誓いを立て毎日我流で剣術の稽古をしていた。

ある日、漂は大臣の昌文君に見出され王宮で働くことになる。数年後、漂は深夜に瀕死の状態で信のもとへ帰ってきた。「お前に頼みたいことがある」と漂は信に地図を渡し息絶えてしまう。その地図に示された場所にたどり着いた信は漂と瓜二つの男、のちの始皇帝となる秦国第三十一代目大王・贏政えいせいと出会うのであった。

良かったところ

ビジュアルがいい

この手の漫画原作映画で一番気になるのは「原作のビジュアルを再現できるか」というところだ。ビジュアル面の翻訳に失敗するとおかしなコスプレ大会になってしまって映画にのめり込めない。この点に失敗した漫画原作映画は多々ある。だが映画『キングダム』は古代中国という舞台、割と少年漫画的で突飛なデザインのキャラが出てくる原作漫画という高いハードルを見事に超えていた。

この映画の何が偉いってちゃんと原作漫画のデザインを実写にしたらどうなるだろうかって道から逃げなかったところだと思うんですよね。漫画をそのまま実写にしたらだいたい情報量の少ない安っぽい絵面になるところをきちんと翻訳できている。それでいて原作の漫画的なキャラデザの再現もきちんとこなしている。河了貂のミノムシの格好とか暗殺者の格好とか山の民の蛮族感とか少年漫画的だから普通に見れるけどそのまま実写にしたら絶対なんだこいつらってなると思うんですよ。でもそれをコスプレ感出さずに実写化できているのがすごい。

暗殺者・ムタ

とか言いつつ一番印象的だったのはムタだったり。
吹き矢、斧、何か首の周りについてるベルトといろんな武器で攻撃してくるのが良かった。

中国でロケもしたそうだが、王宮のセットもかなり作り込んであって安っぽさが一切無かった。実写映画化されると聞いたときは中国で作ってもらったほうが豪華なものになるんじゃないのかなんて思っていたのでこれは見てて正直驚きだった。日本映画でも頑張ればこういう娯楽大作も作れるんじゃん!と思えて嬉しい。

キャスティングがいい

事前に監督から主演の山﨑賢人ありきの企画だったなんてぶっちゃけ話があったようだが、山﨑賢人演じる信を始めとして全体的に原作のイメージを崩さないキャスティングで合っていたと感じられた。自分が特に好きなのは反乱を起こした王弟・成蟜せいきょう役の本郷奏多。顔立ちは原作と比較すると滅茶苦茶イケメンなのだが歪んだ笑みや暗いボンボン感は確かに成蟜で良かったですね。

大沢たかお演じる王騎も良かった。だいたい原作の王騎は一種の超人で実写映画にするならもうCGでやるしかないんじゃないかってキャラクターなのだが、大沢たかおは他の人間とは存在感の違うキャラクターを見事に演じていた。ただ続編を作るのであれば王騎レベルの大将軍を他にも出さないといけないんだよな……。

悪いところ

画面が狭い

画面が全体的に狭い。信と漂が死に別れるシーンなんか信と漂の顔面どアップが交互に映って暑苦しいし、せっかくのアクションシーンもキャラクターに密着しすぎてどう戦っているのかよくわからないシーンも多い。せっかくの古代中国なんて大スケールの舞台なんだから引きの絵で長尺の殺陣を見せたり、乱戦になる時も建物全体を映したりすると良かったのではないかと思う。

多分、予算の限界もあるのだろう。あんまり引きで映すとセットの狭さがわかったり兵士が少なかったりするのがバレてしまったりする問題があるのもわかる。だが、続編を作るのであれば大規模な戦場での会戦が入ってくるし、広大な平地で両軍がぶつかるシーンは撮らなきゃいけないだろう。そのあたりが心配になってくる。

キャラクターのドラマ性が薄くなっている

原作の5巻までを一本の映画にしたんだから仕方ないがキャラクターの掘り下げというか人間ドラマ的な面はどうしても薄くなってしまっている。脇のキャラクターが薄いのはこの際しょうがないが信と政については何か映画オリジナルでも各人のキャラを掘り下げる描写を入れられたらさらに全体が締まって良かったなと思う。

映画での脚色として信が最初に王騎将軍の姿を見る、ラスボスが元将軍の左慈1)原作ではそういう設定はなかったはずになるなどという変更がされていたのでここに信にとっての将軍とは何かとか映画一本を貫く成長ストーリーがあったらよりまとまっていたんじゃないかと2)信はどういう将軍になるかというのはキングダム全体を通して描かれる話だと思うのでまだ戦場に出てすらない段階で描いていいかという問題もあるが

とは言え不満はそのくらいで、原作を台無しにする改変もなかったし最近の日本映画、漫画原作映画ではかなりの良作と言っていいのではないか。映画化嫌いの人も騙されたと思って是非観て欲しい。

脚注   [ + ]

1. 原作ではそういう設定はなかったはず
2. 信はどういう将軍になるかというのはキングダム全体を通して描かれる話だと思うのでまだ戦場に出てすらない段階で描いていいかという問題もあるが
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